2011.12.05 (生保 揺れる針路)(上)売れ筋に落とし穴 「銀行窓販」統制利かず

(生保 揺れる針路)(上)売れ筋に落とし穴 「銀行窓販」統制利かず

 生命保険会社の破綻が続いた2001年の「生保危機」から10年。株安、円高、低
金利が再び生保経営を揺さぶり始めた。銀行を通じて保険を売る「銀行窓販」は
成長市場だが、過度の依存にはリスクも伴う。運用環境の劣化は業界再編の呼び
水となる可能性もある。

■ 収入全体の5割

 都内の信託銀行に資産運用の相談に訪れた60歳代の男性は、こんな提案を受け
た。「利回りも良いし、相続対策にもなります」。手渡されたパンフレットは明
治安田生命保険の一時払い終身保険「Everybody(エブリバディ)」だっ
た。

 11年4~9月期決算で、明治安田生命の銀行窓販による保険料収入は1兆2059
億円と前年同期に比べ2倍超。収入全体の約5割を占め、営業職員による販売収
入(7471億円)の1.6倍だった。銀行窓販収入の94%を一時払い終身保険で稼ぎ出
した。

 大手生保の一時払い終身保険の利回り(予定利率)は1%前後。定期預金より
高利回りを見込める。低金利で顧客の喜ぶ預金商品が見あたらない銀行には、販
売手数料を稼げる有力な商品だ。

 生保にも利点はある。自前で売る死亡保障の生保商品は20~30年の長期契約が
基本。一方、銀行窓販向けの一時払い商品は短期間で収入増を見込める。ただ、
思わぬ落とし穴にもなり得る。

 「販売目標を上げてほしい」。大手生保の銀行窓販担当者は取引先の地方銀行
から迫られた。手数料を稼ぎたい銀行が販売増を求めてきたのだ。

 年度初めに運用計画を立てるので販売目標は変えられない、と告げると銀行は
「一押し商品は他社にもありますからね」と一言。生保の担当者は「自社商品を
積極的に売ってもらえるかは銀行次第」と明かす。販売量を自社でコントロール
しにくいのが実情だ。

 預金よりもお得――。銀行が顧客に終身保険を売る際の決まり文句だ。ただ、
市場金利が上がれば利回りが一定の一時払い終身保険の魅力は相対的に下がり、
解約が殺到する懸念もある。その際の資金負担はまるまる販売元の保険会社が負
う。販売時に手数料を稼ぐだけの銀行は、後の運用リスクを気にせず販売額を増
やしがちだ。

■ 振れ幅が大きく

 住友生命保険や富国生命保険は前年に一時払い商品の販売を休止したり抑えた
りした結果、今期は大幅な減収が続く。運用成績次第で年金額が変わる変額年金
保険を過去に販売した第一生命保険や三井生命保険は、株価下落に伴う損失の穴
埋めに今も苦しむ。銀行窓販は「有力な販売チャネルの一つ」(明治安田生命の
殿岡裕章専務執行役員)だが、収益の振れ幅は大きくなる。

 明治安田生命は12月から一時払い終身保険の予定利率を1.5%から1.1%に下げ
た。資金流入リスクを避けるためで、他社が追随する可能性もある。利率を下げ
れば金融商品としての魅力は薄れる。保険料が上がり契約者にしわ寄せが及ぶ。

(日経新聞)


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